有限会社吉川商店

建設業

技・サービス

しごと紹介

1. 「森林王国」の材木商から古民家再生の専門家へ

杉や檜(ひのき)の凛とした立ち姿も美しい、緑豊かな山林が連なる多可町加美区。かつて森林王国と呼ばれ、300年以上の歴史に彩られた林業の地で、歴史ある建築物の継承と自然素材の住まいづくりに取り組む企業がある。

有限会社 吉川商店が、そんな加美区で木材業をスタートさせたのは、今からおよそ65年前。現在の代表取締役 吉川和利さんの父にあたる先代が、中学を卒業後、地域の山林に育つ木を伐採し販売を始めた。昭和33年には製材所を併設。
「昭和38年に行われた姫路城の大改修でも『西の丸の足場を組むのに、丸太を毎日配送した』と話していました。電柱の木も取扱っていたそうですよ」

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その後、建築工事業、土木工事業、宅地建物取引業と仕事のフィールドを拡げ、3年前には「日本民家再生協会」の正会員に登録。さらに、兵庫県が取組む「ひょうご住まいサポートセンター」の古民家再生の専門家として、伝統的木造建築の保存・再生に携わっている。

2. 古き良き日本家屋の灯を消すな!

「昭和61~62年頃から安い輸入材が増え始め、材木価格が5分の1程度になってしまいました。弊社でもその頃から、山の仕事から建築業へシフトを始めたんです。今は家を建てるからといって、山へ入って木を切ってくる必要がありません。建築様式が変わったことで、木材の使われ方も変わってきました」

かつて家を建てることは、最短でも半年はかかる一大事業だった。節(ふし)のない木材にこだわった柱や、何度も何度も塗り重ねた壁など、手間も時間も費やす作業の積み重ね。中には、自分の家で管理している山の木を、住まいに使ってほしいというオーダーも。
「山の南の斜面に育つ木を住宅の南側に、北の斜面に育つ木は住宅の北側に使ってほしいという希望までありましたから」

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それが今では、家が建つまで3ヶ月。柱の見えない構造が節へのこだわりを奪い、家族形態の変化は日本の住宅から和室を消した。
「ここ10年ほどは、伝統建築による住宅を建てていませんね」と、吉川社長は残念そうだ。

そんな中、今また古い家の良さを見直そうという風潮が生まれ、リフォームの依頼が増えてきたという。再生への流れが生まれている。
「解体して建て直すが人多かったんですが、昔の建築様式の見直しが進んでいるんです」と語る吉川社長は、今では手がける人の少なくなった日本の伝統建築の専門家として、古民家再生事業に力を注いでいる。

3. 例えば、蔵を寝室に。暮らしやすさも「再生」可能

現在の住宅は、完成までの期間が短いのはいいのだが、耐久年数まで短いというデメリットがある。昔から継承されて来た伝統工法の住宅は、手入れをすれば100年は住まうことができる。しかし、現在の住宅はわずか25年ほど。さらに、耐震性という点でも在来工法は抜群の威力を発揮することがわかってきた。

伝統工法で建てる建物の壁は、編んだ竹に壁土が塗り重ねられたもの。これが、現代建築の通常の壁に比べ、1.5倍もの耐震力を備えた「耐震壁」であることがわかったのだ。家は揺れるものという前提で建てられているため、組み合わされた木と木は揺れてもはずれることがない。横揺れに強い家。これが日本の伝統工法の住宅だ。
「そんな背景も、古民家再生の後押しになっているのかもしれませんね」

さらに日本の伝統建築の良さは、こうした機能性だけではない。日本の風土に適した住みやすさも、工夫次第で現代の生活にそのまま「再生」できる。

「丹波市で農業がしたいと、川西市から移住された方の古民家リフォームを手がけたんです。昔の家は、間取りが田の字。どこで寝よう?という話になった時、蔵を寝室にしようということになって……。日本の蔵は、夏涼しくて冬暖かいため、寝室として使うにはもってこいだったんです。テレビでも放映されたんですよ。施主さんにも大変気に入ってもらえました」

吉川商店が手がけるリフォームの中で、こうした住みやすさの提案は古民家に限らない。

4. 一軒一軒の魅力を活かす息吹を吹き込んで

集成材が主流となりつつある住宅建築の現状にあって、吉川商店がこだわり続けるのが「自然と共存する木の住まい」。
事務所をモデルルームとして見せるため、杉の無垢材をフローリングに、檜(ひのき)の無垢材を腰板に使用。
住宅スペースに関しては、子ども部屋に総ヒノキの壁と珪藻土の天井を採り入れた。

「部屋の空気が違うんです。特に梅雨の時期は、木が湿気を吸って空気清浄機の役割を果たします。本物の木は生きていますから、呼吸もするし暖かい。フローリングでも裸足で過ごせるんですよ」

お客様からの依頼でも、予算の中でどうすれば本物を使えるかを考える。たとえ節が目立つ木材でも「使ってくれたの?」と、施主たちには喜ばれるという。
「本物の良さは、住んでみてわかる。『やっぱり違う』って気付いていただけますね」

さらに、「コストがかかるから無理!」と思われることでも、囲炉裏やテーブルづくりなど、予算内で「こんなこともできるよ」と提案をして施主を喜ばせることが楽しいと言う。

「福知山で、かやぶき屋根の古民家をリフォームした時のことです。大きな梁(はり)のある天井に、アメ色になった竹が並んでいました。その昔、かまどを使っていた頃のもので、かまどから立ちのぼる煙にいぶされた『すす竹』と呼ばれる竹なんですが、これが風情たっぷりなんです。人工的につくれない貴重なもの。リフォームのインテリアとして利用するために、取り外して持ち帰った竹を一本ずつ丁寧に洗って磨きあげました」と話すのは、奥様の真理さん。

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リフォームとは、その場にある古い材料に、新たな息吹を吹き込み何倍もの魅力を添えて活かすこと。一軒一軒の住まいに合った提案を工夫し、生活スタイルに似合う環境の中で、心地よい住空間によみがえらせる作業なのだ。

5. 異世代・自然・古きものとの、共存をめざしたい

多可町内の空き家は、およそ790戸(平成25年住宅・土地統計調査より)。吉川社長は、この数字に顔を曇らせる。
「ようやく空き家バンクが多可町にもできましたが、官と民が協力し合いながら特化したことを企画して、共存を図っていかないとダメですね。空き家を住宅ではなく、レストランや店舗、事務所に活用するなど、リフォームに取組む側からの提案が必要だと思っています。若者のUターン、Iターンの手助けをしたいですね」

そして、もう一点。山の資源利用をすすめることだ。
「今は山の手入れをする人がいない。間伐をしないから日が差さないため、草が生えない。根が育たないから保水力がない。だから、雨が降ると水かさが増え、山崩れが起こる。木を間引かないと、土も山も木もダメになります」

地元地域が抱える課題――異世代間のコミュニケーションや、自然との共存、古き良きものを残す工夫――を、古民家再生によって少しでも解消できないか。吉川商店が取組むのは、地元密着企業ならではの提案と工夫を大切にした、共存型リフォームとも呼ぶべき仕事なのだ。




技・サービス紹介

最近、古民家の再生リフォームがもてはやされているが、実はそのためには、高度な専門知識と技術が必要とされるのをご存知だろうか。
吉川商店の代表取締役・吉川和利さんは、そんな古民家再生の専門家だ。

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伝統的木造建築、いわゆる古民家とは ①軸組み工法で造られている ②伝統的な継ぎ手・仕口を用いている ③筋交いを多用せず「貫」を用いている ④土塗り壁など湿式工法を用いた壁 ⑤和瓦や茅葺など伝統的素材を用いた屋根 という条件があり、吉川社長はこれらに対応できる伝統工法のエキスパート。

建物を建てる際、大工が墨付け(木材を加工する際に「墨つぼ」と「墨さし」を使って目印をつけること)や、刻み(つけた目印に合わせ、材木と材木がつながるようノミや金づちで加工すること)など、職人の手作業で木と木を組み上げ、接合させながら住宅を建ててゆく昔ながらの工法だ。

「このやり方で住宅を建てられる人が少なくなりました。現在はプレカット工法といって、工場であらかじめ木をカットしておき、現場ではボルトで締めるだけ。いわばプラモデルみたいに家を建てるのが主流です。のこぎりもカンナも、大工さえもいらない時代なんです」

だからこそ増改築の場面で、初めて大工の技量が問われるという。この木を継ぐのに必要なものは何か、補強が必要な壁なのか、柱を抜いても大丈夫かなど、きちんと見極めができないと増改築はできないのだ。
「柱が歪んだままリフォームをしてしまうと、建具がダメになる。古民家のリフォームは、柱をまっすぐに直し、古い家の傾きや歪みを整えることから始まるんです。昔は石の上に柱を立てる特殊な技術を用いていました。古民家の再生は、技・知識・経験値が必要な仕事なんです」

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そんな日本ならではの建築様式の継承が、疎かになっている。
「昔は弟子を育てるのが当たり前でした。技術の継承は、人から人にしかできないこと。師弟関係が結びにくい今、同業者間で力を合わせ仕事をシェアしたり、アイデアを共有する取組みが必要です」
古民家の再生に必要な技の継承をかなえるキーワードは、人や時の垣根を越えた「共存」なのだ。

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経営者紹介

1. 進む道には家業の承継しかなかった

建築の専門学校を卒業後、21才で家業に入りました。当時は、家の事業を継ぐことが当たり前。他に選択肢はなかったんです。

物心ついた頃から、この仕事しか見てこなかったですね。小学生の頃から、木の皮むきなんかを手伝っていました。
有無を言わさず山へ連れて行かれるんです。「しんどい~」「歩くのはイヤだ~」と、ずっと思っていました。中高生に、木のことなんてわかりませんよね。

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頑固な父でしたが、材木を見る目はすごいと、いつも思っていました。丸太の状態からずっと見てきているだけあって、ちょっと目にしただけで、いい製品がとれる木かどうかがわかっていましたね。

2. 山も土木も建築も、経験を財産に

家業に入ってまず、山林で木を切って運ぶ仕事からスタートしました。それから建築、土木、建物取引…と、時代と世の中のニーズに合わせ、業務が自然と拡大していきました。

山の木に始まり、製材所で木材を挽いたり、建築や土木など、いろんな仕事をやって来た経験や体験の積み重ねで、今の私があると思っています。
「そこに使うなら、木はこれがいいですよ。そこは、こうしたほうがいいですね」など、状況に応じてお客様にいろんな提案やアドバイスができるのも、こうした知識と経験があればこそ。

実は私は、「今の仕事じゃないとダメだ」とは思っていません。「どうしても、この仕事を続けたい」という、頑なな思いがあるわけでもありません。ただ「自分に合っている」と思っているだけなんです。
建築の現場だけで働いていたのでは、今の柔軟な考えは持てていないと思います。山の仕事から始めたから、今があると思っているんです。

3. 誠心誠意が次の現場につながってきた

今、弊社は古民家再生事業を柱にしていますが、やはり達成感ややりがいは何倍もあります。
住宅って、取り壊してみて初めてわかることが多いんです。例えば、ここの柱は抜けない、この部材は取り替えないといけない、実は床が腐っていた……などなど。

特に、古民家のリフォームは知識と技術が必要な仕事。誰が見てもわかるということではないだけに、見えないところや見えなくなるところほど、どれだけきちんと手をかけて仕事ができるかだと思います。見なかったことにすることもできるだけに、誠心誠意尽くして、きちんとした仕事に仕上げることが大切です。
当たり前のことのように思いますが、弊社の何十年もの実績は、こうしたお客さんへの誠意が伝わっている証拠なのではないかと思っています。

その他にも、在来工法の特殊な見積りを、できる限り対応できるよう古民家リフォーム専用の見積りソフトを採用したり、リフォーム後の部屋がどんな広さになるのか、家具を入れたらどんな空間に変わるのかを体験できる、3D映像のシミュレーションソフトを活用したり……。
大手のリフォーム会社には真似のできない柔軟な対応で、地元に密着した丁寧かつ迅速な仕事をこれからも心がけてゆきます。

4. 古民家活用で地域おこし、成功事例を多可町から

これからますます少子化が進んで、空き家が増えるでしょうね。これからの建築業は、再生につながる利用をいかに増やせるかがキーポイントになると思うんです。だからこそ、空き家のリフォームにも工夫と提案が必要で、我々のような地元に密着した仕事が求められると思っています。

例えば田舎ならではの大きな家を、核家族で機能的に使う方法を考えた時、減築の必要がでてきます。納屋を取り壊して畑や駐車場にするなど、こちらからの提案が必要だと思っています。

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さらに、空き家を住宅としてではなく、レストランや店舗、事務所に活用すること。そんな提案や発信ができれば、若者のUターン・Iターンに貢献できるのではないでしょうか。
一流シェフを招き入れ、古民家をレストランにしたり、山中の古民家へIT企業の東京本社を誘致して、地域おこしにつなげたり。そんな成功事例を、ぜひ多可町からも生み出したいですね。
ライター:内橋 麻衣子