太平金属株式会社

製造業

技・サービス

しごと紹介

1. ハイテク社会の、縁の下の力持ちとして

「県内一円を中心に、お客様のニーズに合わせ頑張っている社員の姿を見てほしい」
このたびの取材に際し、「応募のきっかけ」欄にしたためられた社長様の想い。
自社のPRよりもまず、社員への想いがほとばしる一行を目にした瞬間、太平金属株式会社という企業に、さらに藤田英樹社長という人物に出会ってみたい――。取材の日が待ち遠しかった。

「プレゼントに差し上げます」
応接室に腰を下ろした取材班が手渡されたのは、何かの部品を思わせる金属片。わずか1センチほどの小さなオブジェは、よく見ると自転車だ。
「端材をレーザーで切断したものなんです」
そのかわいらしさと精巧な技術に心をつかまれた一方で、藤田社長の柔和なまなざしと穏やかな物腰に、「応募のきっかけ」の一行が心によみがえった。

空の高さをひときわ感じさせる、多可町中区のシンボル妙見山。「妙見富士」の異名を持つこの秀峰のふもとに、太平金属株式会社が誕生して15年。自然あふれるのどかな郊外で、現代のハイテク技術を金属加工で支え続ける「縁の下の力持ち」企業だ。大手メーカーの問屋的な位置で、流通の核となる部分を担っている。

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平成8年、姫路市にあるステンレスとアルミニウムの専門商社・太平工材株式会社の妙見事業所として開設。5年後の平成13年には太平金属株式会社として独立を果たし、以来、ステンレス鋼やアルミニウム材の切断・加工・販売に携わり続けている。

2. 図面一枚から期待される製品をつくりだす

ヘルメットを手渡され、広やかな工場の中へ。高い天井に響く何台もの切断機の音の中、目に入るのは積み上げられた鋼板、鋼板、鋼板……。

扱う製品はステンレス鋼なら、板材をはじめ丸棒や角棒、化粧管といった一次製品から、ボルトやナットなどの二次製品。アルミニウムなら、板・棒・パイプなど。さらには、チタンやニッケル、超合金といった高機能材料まで。
取引先の注文に合わせた切断加工だ。素材の用途に合わせ、レーザー、プラズマ、シャーリング、丸鋸の各切断機を使い分ける。

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一方、近年は図面による発注も増加中。顧客から届く図面をCADを使って自社でデータ化し、レーザー切断などで金属加工製品に仕上げる業務も増えてきた。
「加工提案も積極的に行っています。データ化する時点で『穴をあけた方がいいのでは?』など、こちらからアイデアをお伝えすることも。取引先と相談しながら業務を進めています」

求められるニーズの一歩先に応えるべく、特殊な規格外サイズや付加価値を備えた加工品への対応にも、社員一丸となって取組んでいる。


3. 寄り添うのは、地元地域のお客様

ステンレス・アルミニウムに特化した専門性の高さとともに、太平金属のもうひとつの大きな魅力が地域密着、そして顧客密着主義だ。
顔を合わせての営業にこだわり続け、仕上った製品は郵送や宅配ではなく、必ず自社のトラックで取引先のもとへ運んでいる。
「しばらく顔を出せずにいると、『来てくれへんの?』と声をかけていただくんです。うれしいですね」

電話やメールではなく、直接足を運び顔を見ながら言葉を交わすことで「新たな情報を仕入れるきっかけになったり、お客様の細やかな要望に答えることができる」と藤田社長。
「同業者は京阪神地区にも多いんですが、弊社の地域密着は何よりの強みです。直接お客様に接することができるので、万一の間違いにもすぐ対応できて喜ばれています」

発注を受けてから納品まで、わずか2~3日という短い納期に対応できるのも、顧客と重ねる日頃のコミュニケーションが生む信頼関係あればこそだろう。

「地元のお客様こそ大切にしたいんです。お客様に喜んでもらうことが、最大の目標ですから」

4. 人を雇用し、人を育てる。それこそが地域貢献 

高い専門性と地元企業に喜ばれる地域・顧客密着主義で、着実に成長を遂げている太平金属株式会社だが、ひとつ大きな課題も抱えている。後継者づくりだ。

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「弊社の平均年齢は、30代後半から40代。この世代が抜けてしまうと、次世代の人材がありません。しかも社員のほとんどが20代・30代で入社してきているので、人材教育を受けた経験がない社員ばかりです。後継者をつくり育てるために、まず社内の40代・50代に人材教育の分野で育ってもらおうと思っています」

望む人材との出会いに向け、思案を重ねる藤田社長が温めていること。それは、工業高校生が授業で作成するCADデータを、そのまま加工して高校生たちに届けるというアイデアだ。
「高校生たちは、いろんな発想を持っているはずなので楽しいと思うんです。自分が考えたデータがそのまま形になって目の前に届くことで、太平金属株式会社の名前を知ってもらえます。すると就職先の選択肢に加えてもらいやすくなると思うんです」

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「高校生や大学生たちに、就職先としてぜひ弊社に関心を持ってもらいたい。営業の第一線で活躍してほしいと願っています。知識は聞いて、聞いて身に着けるものです。怒られながら経験することで、自分のものになってゆきます。やる気と、長く働き続ける気持ちを大切にした学生さんたちに出会いたいですね」

自社の雇用を伸ばすことが、地元への貢献になると語る藤田社長。地域密着を大切にした企業の想いは、そのまま「人」を大切にしたいと願う藤田社長の想いでもある。
「頑張っている社員の姿を見てほしい」
取材中、最後まで心から離れない藤田社長の言葉だった。




技・サービス紹介

工場の中を歩いている途中、鋼材や切断機の間に腰を下ろし、切断したばかりの製品をやすりで磨いている人に出会った。

「現場の従業員たちは、顧客がいつも出してくる要望をつかんでいるんです。『あの企業に納める製品だから、切り口をなめらかに仕上げておいてあげよう』とか……。特に指示は出ていないんですけどね」と藤田社長。

太平金属株式会社の強みは、アルミニウムとステンレスに特化した専門性の高さに加え、この顧客に密着した心配り。取引先の名前を見ただけで、伝票には書き記されていない細かな要望をキャッチ。納品のかたちを、一社ごとに合わせているのだ。

レーザー、プラズマ、シャーリング、丸鋸といった各切断機は、素材やその用途、切断面の特長などを考慮しながら使い分けを図る。切断機を操作するオペレーターたちも、直接取引先と向き合うことはなくても、鋼材を通して顧客一社一社に心をはせながら仕事をしている。

そんな細やかな仕事ぶりが認められ、会長から論功行賞を表彰された、吉河建太さん(29才)。入社4年を迎えたオペレーターだ。3次元CADとロータリーインデックスによる最新のレーザー機を駆使し、大胆かつ繊細な仕事を重ねている。

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「同じ材料でも、メーカーによって切りやすさが違うんです。材料に合った条件を探っていく作業から始め、切断が上手くできた時は達成感があります」

記号化されたコンピュータのデータが、流れるように画面に映し出されている。その奥に横たわる大きな切断機の中では、滑らかな動きとともにレーザーが正確なトレースを描いてゆく。オペレーションの基本は、すべてこのデータ。オペレーターたちは記号を覚え意味を理解しながら、機械を操作するのだという。

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「切断するのは機械なんですが、人の手やセンス、感覚が必要なんです。これが楽しい。スピードや条件を変えながら試してみることで、切り口の美しさや断面の滑らかさが形になります。そこには必ず美しさの原理があるんです。経験値から、その答えが出て来ることも楽しさのひとつです」

人と機械の間に「心」を通い合わせる。太平金属株式会社には、そんな技術が存在するのだ。
端正な吉河さんの横顔越しに、スマートに流れてゆく鋼板を見ながら、プロの技を思った。




経営者紹介

1. 「この会社で働けてよかった!」と思える職場に

地元の工業高校を卒業後、他業種を経て平成15年に入社しました。今年4月に代表取締役に就任したばかりです。
会長から社長就任の話を持ちかけられた時は、ただただ葛藤の毎日でした。自分の家族だけでなく、社員の生活も社員の家族も、すべて私の肩にかかってくる……100人規模で守らなくてはならないわけです。

そんな私が、会長からのオファーを受ける決め手になった出来事がありました。
当時、事務職に就いていた20代の女性なんですが、退職を勧められるご両親に対し「太平金属株式会社は、我慢してこそ努力が実る職場だから、ここで仕事を頑張りたい」と伝えたそうです。
最後にはご両親も「この会社で、娘が働かせていただけてよかったです」という感謝の言葉をくださいました。

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決心できたのは、その時でした。
「つらいことや厳しいことがあっても、最後にはこの会社で働けてよかった!」と、従業員みんなに思ってもらえる職場にしよう。従業員に幸せになってもらおうと決めたんです。

2. 現場が学び、顧客が師

入社前、私の採用面接をしてくれたのも会長でした。
実は面接の時、会長から「あんたに、この仕事が務まるかな?」と言われたんです。

入社直後は、いきなり2トントラックでの営業配送が待っていました。 
「トラックぐらい乗れるやろ」と会長は言いますが、2トントラックなんて、そうそう運転する機会はありませんよね。私も乗ったことなんてありませんでした。それでもハンドルを握り、パイプの納品などをこなしていましたね。

当時はお客さんが先生です。
「アングル一本持ってきて」と言われても、アングルが何かわかりません。
「アングルって何ですか?」
「なんや、アングルも知らんのかいな」
お客さんに教えてもらいながら、すべて現場で仕事を覚えていきました。

3. 「人事を尽くして天命を待つ」とは信頼の証

私が先代である会長より、全事業を引き継いでまだ半年。社長として会社に抱く思いや理念など、思考錯誤の真っ最中なんです。そんな中、敢えて今、先代から受け継いだものを考えてみると「感謝・信頼・創意工夫・人生のおもしろさの追求」という会長の言葉でしょうか。

会長は現在82才。毎月1日に来社し、社員みんなの気持ちをひとつにするため、神棚に向かって般若心経を一緒に唱えます。26日の給料日には、幹部たちに直接明細を手渡しに来社します。
厳しい人で、「会社には、鬼がひとりいないとダメだ」というのが信条。今も会長の来社時には、職場の空気がピンと張り詰めるんです。

「頑張っていくためには、儲けなくてはいけない。それが従業員の幸せにつながるんだ」と、お金になぞらえながら『創意工夫』の大切さを説いてくれます。
「売上があること、事故がないこと……あたりまえのことが、実はあたりまえじゃない。努力しないとダメだ」という『感謝』の気持ちも……。

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そんな会長の影響でしょうね。現在の私の信条は「人事を尽くして天命を待つ」。
精一杯まで努力したら、あとは神頼み。つらいことや厳しいことがあっても、結果は後からついてくる。まさに『信頼』ですね。その先に『人生のおもしろさ』があるのではないかと思っています。

4. 「のびしろ」を育て、地域おこしに貢献を!

おかげさまで弊社も無事に16期を迎えました。節目となる20期をめざし、社員一同でひとつの目標を持ちながら、さらに頑張ってゆこうと心に誓っています。

そしてもう一つ、地域に密着しての事業ですから、事業を通して地元・多可町に何かを残せたら…。数年前にはお隣の丹波市に、ハイテン鋼で制作した恐竜を寄贈しました。今度は、ステンレス材やアルミニウム鋼などで、多可町のモニュメントなどを制作できたらいいですね。

弊社は「のびしろ」のある企業だと思っているんです。まだまだやれることはあります。
大人は、つい楽な方へ行きたがり何かと予防線を張ってしまうものですが、小さい子どもや小学生などは、できそうになくてもやってみますよね。未知の力を持っているなあと感じるんです。
一方、大人は先に「無理だ」と言って、やらずに終わる。やってみたら、できることはもっとあるはずなんです。

そんな想いを忘れないようにしながら、これからもっと人を育てたい。身近なところから目標を定め、目指し続けるのは高み。それが人を育てることだと思いますし、地域おこしへの何よりの貢献になると信じています。
ライター:内橋 麻衣子